動画やICレコーダーで自分の声を録音し、聞き直したとき「なんか自分の声じゃない」「聞いていて気持ち悪い」というように感じることは誰もが通ってきた道だと思います。
では、どうして録音した声と普段聞いている自分の声が別の声に聞こえてしまうのでしょうか? また、実際はどちらの声が本当の声なのでしょうか? 今回は録音した声と普段自分が聞いている声との違いに関するお話です。
この前、運動会でお母さんが動画を撮影してくれてたんだけど後から見直したら自分の声が全然違ってびっくりしたの
録音した声って自分の声とは違って聞こえるよね
でもそれってどうしてなんだろう、他の人の声は動画でも同じように聞こえるのに…
じゃあ今回はそのことについて調べてみようか
自分の声と録音した声
自分の声と録音した声に違いを感じるだけでなく、その声が好きじゃないと感じる人は8割を超えるといわれています。しかし、他の人の声を聴いて耳についたり、イヤな気持ちになったりすることってほとんどないですよね。
では、どうして人は自分の録音した声を聴くとイヤな気持ちになってしまうのでしょうか。
実は、それはすごく単純なことで聞き慣れているかいないかという、たったそれだけのことなのです。心理学的な話になりますが、人は単純接触(今回の場合は録音した自分の声を聴く)の回数が多くなればなるほど親しみを持つようになります。
毎日のように聞いている自分の声のほうが当然接触が多く親しみがあるため、自分が思っている感覚と違う声を聴くとイヤな気持ちになってしまうというわけですね。
声とは一般的に、録音した声のほうが普段自分が聞いている声よりも低く感じる人が多いようです。(ちなみに筆者は録音の声のほうが高く聞こえます)
声が違って聞こえる理由
では、どうして違って聞こえるのでしょうか。その答えは、声の聞こえ方にあります。
気導音
まず、周りの人が聞いている声である録音した声ですが、これは口からでた声が空気(水中であれば水)を振動させ人の鼓膜を震わせ伝わっているものです。この伝わり方をする音を「気導音」といいます。
録音した声も、空気を振動させて自分の耳に伝わるため「気導音」のみを聞いていることになります。
ちなみに、声もそうですが音というのは空気や水を振動させ鼓膜まで届いているため震えるものがない真空中では声や音は聞こえなくなります。
骨導音
では、自分の出した声はどうやって伝わっているのでしょうか。
自分から発せられた声は、「気導音」と共にもう一つ「骨導音」という形で伝わることになります。
「骨導音」とは、自分が声を発した時の声帯の振動が頭蓋骨を伝わり直接聞こえる音です。骨を伝わって音が聞こえる「骨伝導」って聞いたことありませんか?それと同じものです。
自分自身は「気導音」「骨導音」の両方を同時に聞いているわけです。そのため他人に聞こえている声(録音した声)と自分が聞いている声に大きく違いがあるわけですね。
へー、面白いね
自分の声だけは骨を通るから違って聞こえるんだね
うん、ちゃんと空気を伝わっている声も聞こえてるんだけど混ざっているから違って聞こえるんだ
人体の不思議だね
その不思議を生かした研究や開発について少しだけ触れてみるね
骨伝導を生かした製品
骨伝導による音の伝わりは空気中を伝わらず直接耳に届くため、いろんな分野で活用されています。
例えば、ヘリコプターの操縦士のように環境音が大きすぎて通常の会話が困難な仕事の現場では非常に有用です。その他にも、携帯電話で通話するにも周りの声や音がうるさすぎて相手の声が聞こえにくいときってありますよね。そういう時でも、相手の声が聞こえるような骨伝導式の携帯電話というのも存在しています。
また、「気導音」だけが聞くことができない聴力の障害を持っている人であれば骨伝導による通話や会話ができるヘッドホンも開発されています。
このように、骨伝導を生かした商品はたくさん開発されており、現在でも研究されています。
周りの音がうるさくても聞こえる携帯電話って便利そう
人の体の仕組みを生かした商品だよね
まとめ
- 声の伝わり方には空気や水の振動より伝わる「気導音」と直接頭蓋骨を通して伝わる「骨導音」がある
- 録音した声や他人の声は「気導音」のみ、自分の声は「気導音」と「骨導音」の両方を同時に聞いているため違って聞こえる
- 周りの音が大きくても聞こえる「骨導音(骨伝導)」を生かした商品がたくさん開発されている
今回は声の聞こえ方の違いについて調べてみました。
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